スタッフ高橋の目線

毎度おなじみのコーナーです。
昨日、豊原さやかさんの昨年のワークショップのレポートを読んで、ちょっとうるっとして、
昨年、仕事のため(あくまでも本職は美術工芸短大の事務局員ですから)そのシーンを見逃したことを
いたく残念に思っていました。
そして今日も、午前中は大村さんが大物を作るというのに、やっぱり仕事が忙しく、あきらめかけていました。


昼休みになったので、急いで行ってみると・・・
何だかガラス工房がただごとじゃない!
防火服を3人も着ている!普段は1人着てるのしか見たことないのに!
たまたま見学に来ていた出展作家さんまで手伝っている!
たまたま遊びに来ていた卒業生まで手伝っている!
そこにいたガラスを扱える人間が、一人残らず何かの役目を持って一体となっている。
そしてお客さんが固唾を飲んで見守っている。
そう、今まさに、大村さんの大きな作品が形作りを終え、電気炉に入れられようとしていたのです。
その大きな作品は、大きな炉の前に、防火服を着た3人によって運ばれてきました。
さながら、患者さんを担架で運んでいるよう。
いや、冗談じゃなくて、そのくらいの大きさと重さはあったんじゃないでしょうか。
しかも熱くて、壊れやすくて、慎重さと手早さが要求されます。
張りつめる空気。
炉の扉を開ける係の人とタイミングを合わせて、慎重に炉の中に置かれ、急いで扉が閉められる。
沸き上がる拍手。
それだけしか見ていない私は、それだけでうるっときちゃいました。
防火服を着ていたのは、大村さんのアシスタントさんに加え、ガラスを始めてまだ2年目の美短の学生でした。
脱いだ後の顔はすごく熱そうで、でも、一仕事終えた、いい顔をしていました。
かっこいい!かっこいいよ、君たち!!と、子供が立派に成長した姿を見る親のような気持ちでした。
こんな大勢のすごいチームワークで作品が作られていることに、感動。ただただ感動。
こんな場面を見られて良かったです。
写真を撮るのも忘れて見入っていたので、写真はありません、ごめんなさい。


さて、午後は、辻野さんが、またまた大物を作るという。
大きな黒い壺のまわりに、秋田犬が数匹くっついているのを作るらしい。
かわいい・・・見たい・・・でも仕事が・・・。
ようやく仕事が一段落して見に行くと、犬を作り終わって、大きな壺を作っているところでした。
首の細〜い壺で、素人目にも、大変な作業だということはわかりました。
ようやく作りあげて、1匹目の犬をくっつける。温め直す。
2匹目の犬をくっつける。と、


 ぱりん


 ・・・・・・・・・


一瞬、何が起こったのかわかりませんでした。
あとちょっとだったのに。
あとちょっとで、明日は展示会場に、秋田犬の走り回る大きな壺が飾られるはずだったのに。
息をのんで見守っていたお客さんも、緊張の糸が切れたのか、泣いている方が何人かいらっしゃいました。
そのはかなさがガラスの魅力、とは小牟禮先生がよく言っているので、頭ではわかっていましたが、
実際に目の前で見てしまうと、ショックでした。
そして、そんな思いどおりにならない素材を扱って、こんな思いを何度もして、
それでもガラスの魅力にとりつかれて、ずっとガラスを続けている作家さんに、
すごい!というか、かっこいい!というか、何て言ったらいいのか言葉が見つからないけれど、
とにかく、心が動かされました。


いかがでしょうか。
ガラスの素人の私の感じたままを書いてみましたが、少しでも何かを感じていただけたら幸いです。